紫外線を避けすぎても問題?ビタミンDで丈夫なからだを作ろう!
太陽紫外線が皮膚に照射されると、体内でビタミンDが合成されます。
ビタミンDは、骨を丈夫にするために必要なホルモンとして働きます。高血圧・がん・冬季うつ・自己免疫疾患などの疾病予防にも効果 があるといわれます。
しかし、最近日本人の多くが日光浴不足や日焼け止めの使い過ぎによりビタミンDが欠乏しているかもしれないという事実が明らかになってきました。
過度に紫外線を浴びず、過度に紫外線を避けず。よい塩梅はどこなのか、考えました。
紫外線の悪影響
人体への過度な紫外線照射は、その蓄積によってさまざまな悪影響を及ぼします。代表的なものに、日焼け(肌の黒化)、シミ、しわ、たるみ、皮膚がん、白内障などが挙げられます。
シミやたるみをどの程度気にするかは、人に依ると思います。最近は医療レーザーでシミを取ることもできますが、確実ではないですし、しわやたるみもあまり嬉しいものではありません。
皮膚がんは白人にくらべて格段に少ないとはいえ、統計によれば日本国内でも2000年あたりから罹患数が特に増えていて、2019年には1,702人(年間)が皮膚がんで亡くなられています。
太陽光線が皮膚にあたえる影響をまとめたのがこちらの図です。
紫外線の有用性
いっぽう、人体が紫外線から受ける恩恵といえば、ビタミンDの生成です。
UV-Bが肌にあたると、皮膚内の7デビドロコレステロールという物質からプレビタミンD3が生成され→体温によってビタミンD3に変わり→タンパク質によって肝臓に運ばれる、という仕組みです。
また(今回のテーマとは離れますが)太陽にあたることで幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」が脳に分泌され、気持ちも明るくなります。
ビタミンDについて
ビタミンDの働きには
●カルシウムとリンの吸収促進
●骨の形成と成長促進
●糖尿病予防
●発がんの抑制
●免疫強化
●運動機能の維持
などがあるとされています。
ビタミンが不足すると、くる病(小児)、骨粗しょう症(成人)、糖尿病、動脈硬化、うつ、花粉症などの症状が出やすくなります。
いくつになっても自分の足で元気に歩きたい!と願う人にとってかかせない栄養素です。
ビタミンDを得るには
①食べ物から摂取
②紫外線に当たることで皮膚で生成
の2つの方法があります。
食べ物では野菜、穀物、豆、いも類にはほとんど含まれていません。
ビタミンDはさけ、さば、いわしなどの魚類に多く含まれます。乾燥きのこなどにも含まれます。
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」では18歳以上の男女ともに8.5µg/日が設定されています。(出典:厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版)
それに対して、1日に必要なビタミンDの量は15µg以上とされています。
足りない分のビタミンDは、太陽光線を浴びて体内で生成する必要があります。
ビタミンDを十分得るために、どのくらいに日光に当たればよいか
では、健康のためにはいったいどれくらい日光に当たればよいの?
気になりますよね?
各機関が示す健康に必要なビタミンンD生成に要する日光照射推奨時間
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環境省:両手の甲で約15分(日向)または約30分(日陰)
日本ビタミン学会:夏期は約30分、冬期は約1時間
(財)骨粗しょう症財団:夏期は約30分(木陰)、冬季は約1時間
WHO:顔と両手両腕で夏期は約5~15分(肌の色や生活習慣により前後する。低緯度はさらに短時間)
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といった感じで、けっこうバラツキがある上に、数字がアバウトです。
何より地域、季節、時間帯によってかなり状況が変わりますよね。
と思っていたところ、すごーく便利なサイトを発見!
国立環境研究所 地球環境研究センター ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報
https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/index.html
「このくらい紫外線を浴びると十分なビタミンD生成ができる時間」と「それ以上紫外線を浴びると日焼けが始まり肌に悪影響が及ぶ時間」の目安が公開されている大変ありがたいサイトです。
モバイルサイトがさらに輪をかけて優れモノで、地域を選択すると速報値が見られます!
最寄りの観測局を選んで、今日の数値をチェック。
【補足】
・600c㎡(顔と両手甲)を露出した場合と、1200c㎡(腕と脚も)を露出した場合が選べます。
・ビタミンDの必要摂取量を、成人を対象に一日で15µgとし、そのうち約5µgを食物から摂取することとし、残りの10µgを皮膚で生成するための時間を推定。
・日本人に多いスキンタイプⅢを想定した値。
雲があるかないかや、スキンタイプ等によって状況は変わりますが、お出かけ前にどんな装備で出ればよいかの判断基準になりますね。
昨日の投稿ではサンスクリーンの紹介をしました。サンスクリーンを塗ることでUV-Bがカットされますので、必要に応じての使用をおすすめします。
真夏に30分ジョギングするなら顔は紫外線に当てず(帽子やサンスクリーンで防御)、日に当てるのは脚だけで十分かな…という加減ができたり。美容面への悪影響を考えれば、必要以上に紫外線に当たる必要はないですからね~
また、「〇月上旬」などと時期を選択し、肌の露出部分を選択すると過去の平均値を見ることもできます。これを使うと、季節や時間帯で地上に届く紫外線量が大きく違うことがよくわかります。
たとえば、関東(つくば局)で12月の午前9時に顔と手の甲を露出…の条件だと、
・ビタミンD生成紫外線量を浴びるには…193分
・1MED(最少紅斑紫外線量)を浴びるには…313分
となっていました。こんなに紫外線を浴びても大丈夫なんだ…!?朝30分の散歩だけでは足らないのか!とちょっと意外でした。
データはあくまでも机上での計算ですから、実際にその人の体内でどのような反応や代謝が起きるかまでは知ることができません。シミやたるみの原因にしても、紫外線以外に食べ物・化粧品・ホルモンバランスなどたくさんの要因があります。ただ、データはまったく知らないよりは、なんとなくでもわかっていたほうが良いと思います。
ビタミンDの可能性に期待
ビタミンDは、今なにかと注目されている存在です。
血中ビタミンD濃度が30ng/ml以上の人は、COVID-19にほとんど感染せず、さらに重症化しないのではないか、とする説があるようです。また、ビタミンDを利用した簡易ワクチン開発なんかも国内で行われています。
しかし、現時点ではビタミンDとCOVID-19の関係性をはっきりと結論づけるに至っていない状態とのこと。
※だからといってガセというわけではなく、いくつもの研究や論文発表が行われているものの、未査読論文が含まれるという意味でしょう。引き続きウォッチしたい情報です。
いずれにしても、ビタミンDは免疫システムを正常に働かせるために欠かせないホルモンです。欠乏しないように心がけるに超したことはありませんね。
イラストは、独立行政法人国立環境研究所「絵とデータで読む太陽紫外線」2006.03.を参考に作成しました。
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