フラーに学ぶ その1 テンセグリティ
『宇宙船地球号操縦マニュアル』(バックミンスター・フラー著/ちくま学芸文庫)という本があります。
今まで読んだ本の中で、ベスト3に入る大好きな本です。
初めて読んだのは20代後半だったか・・・。建築家であり思想家でもあるフラー博士の世界観は、少々難しいところもあるのですが、私なりの解釈で言うと「世の中のより良いハード(モノ)とソフト(コト)のデザイン」を追求した人物だと思います。
人類の健康、エコロジーを考える上でのヒントもたくさん詰まっていて、当時夢中で読んだ記憶が。その内容を、最近になって改めて理解することが増えています。
その中に出て来る大事なキーワード「テンセグリティ」。
ボディワーク業界でいま注目されている概念です。
テンセグリティー(tensegrity)とは、張力(tension)と統合(integrity)からなる造語で、フラー博士が提唱しました。圧縮力と張力(引っ張る力)という相反する力の釣り合いによって、構造が自己安定化する構造システムを指しています。 この模型を見るとわかりやすいです。
私が組み立てたテンセグリティ模型です。木の棒とゴムで作っています。
1ヶ所押してみると、全体が微妙に動く(動かないところはない)ことがわかります。※以前に組み立てから、隅においやって隣のものにつぶされていた。→するとある部分のゴムが伸びたのか、全体の形が歪んでしまった。最近また作り直しました。
テントや建築物にはよく利用される構造システムです。
実は人体もこれと同じ構造だという考えがあります。
私たちの身体の、いくつもある骨や内臓がばらばらにならず、ひとの形を保っている。さらに、重力に逆らって垂直に立っていられるのは筋肉や腱、靭帯による張力のお陰である、と。
さきほどの模型を人体に見立てると、棒が「骨」、ゴムが「筋膜」と例えられます。「筋膜」は最近の流行りというか、耳にすることが増えましたね。
<ここからは、一部、私の専門外になりますが…>
筋膜といえば「筋肉を覆う薄い膜」という認識で、これが硬くなると凝りや循環のトラブルが発生すると聞いたことがある人もいるかもしれません。英語では「fascia」となるんだそうで、広義には筋肉だけではなく、骨や各臓器も包んでいる結合組織の総称のようです。皮膚などもfasciaのひとつであると考えることができます。そして、全身のfasciaは連続していて、そのネットワークによって、筋骨格系や、神経系、循環器系の働きが維持されているというのです。
このfasciaには、弾力性や張力が変化する性質があります。ストレスや物理的圧力、加齢…さまざまな要因で。
組織中の水分が関係していると考えられていて、水分が多く、弾力に富んでいるのが健康なfasciaの状態です。じゃあ、水をたくさん飲めば良いのか?というとそういう簡単な話でもないのです。
私たちがやっているセラピー、例えばリフレクソロジーは、おもに「皮膚」を扱います(二次的に筋肉も)。
なぜ足の裏を触って全身に働きかけると言えるかというと、皮膚のある1点に刺激をあたえると、全身の皮膚は連続していますから、上の模型のように、全身の各部にも何らかの情報が伝達されるわけです。
気、反射区、ツボ、経絡など、今まで非科学的と言われてきたものが、実はfasciaを介して存在することを証明できるのでは?という考える人もいます。
また、足のことで言うと、足のアーチ構造は、人間の身体の中でも非常によくできた芸術的な部分です。
ここにも、幾重にもfasciaが存在しているはず。
無理のかかる履物、習慣化したよくない動き、怪我などの影響で、一部のfasciaに弾力がなくなれば、筋力が低下し、本来の骨の位置を維持できなくなってしまいます。私のテンセグリティ模型が一度歪んでしまったように。
ほとんどの日本人は、足の立体が崩れています。見た目には骨の問題と思えるものも、元をただしていけば、とっても繊細な組織の問題なのではないかと思います。
その繊細な組織を、どうやってケアするかは、次回に。
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