BORN TO RUN ~走るために生まれた~レビュー(前半)

ボディワーク仲間の間で話題になっていた本『BORN TO RUN』(クリストファー・マクドゥーガル著/NHK出版)を読みました。
読み応えのある本でした。

ランニング愛好家のためのものかと思って読み出しましたが、そうでもなかったです。結構ニューエイジな内容となっています。
「スポーツとして」というより、「生きる方法として」の、走ることを書いています。
そして、噂通り走りたくなる本です。トレイルを走りたい!

内容は、

・メキシコの山岳地帯を彷徨うカバーヨ・ブランコ(白馬)と呼ばれる幻を探し、世界で最も偉大な長距離ランナー「タマウマラ族」の秘密を解く。
・多くのランニングシューズが悪影響を及ぼしていること、人間の身体が走るためにできていることを、バイオメカニクスや人類学など科学的な説明をまじえて解き明かす。
・タラウマラ族と7人のアメリカ人ウルトラマラソンランナーたちがメキシコの峡谷で激突するレースの話。

この3つの物語が融合してひとつの本になっています。

物語といってもほぼ(ぜんぶかな?)実話です。書かれたのがつい最近(アメリカで2009年に発売)のため、今でも活躍する有名なウルトラランナーが登場したり、ランニングシューズ市場の現実などもほぼリアルタイムで理解できるのが、面白さの理由だと思います。
私はやはり、ランニングやランニングシューズによる身体の故障がどうやって起きるのか?という部分に一番興味を持っていました。

この本に書かれている衝撃の事実の数々。。まとめてみました。
(いずれも、大学などの研究機関によるデータが添えられている)

★最高のシューズは最悪である
保護機能(高いクッション性、プロネーション矯正など)がついた高価なランニングシューズを履くものは、安価な(40ドル未満の)シューズを履くランナーよりもけがをする頻度が著しく大きい。
なんとも皮肉な話。

★足はこき使われるのが好き
シューズがすり減ってクッション材が薄くなると、ランナーは足をコントロールしやすくなる。
体操選手を対象にしたテストでも、着地用のマットが厚いほど、選手は強く突き刺すように着地することがわかった。
何種類かの靴で走ってテストすると、衝撃力は裸足が最小で、クッション機能が大きいシューズを履いた時が最大だった。ランニングフォームも同様に推移し、靴を変えると本能的に足の下ろし方を変えていた。

★人間は靴なしで走るようにできている
足の土踏まず(アーチ)ほど優れた構造は、歴史上見当たらない。圧力をかけられると強さを増すのだから、アーチの下に支えをつけてしまえば、構造全体を弱めることになる。(=つまりシューズのアーチサポートは足の力を弱らせる)
シューズを履くのは、足にギプスをはめるようなものだ。シューズが仕事をすれば、腱は硬くなり、筋肉はしなびる。足は戦いを生きがいとし、プレッシャーのもとで強くなる。
裸足で歩く者は、地面について、地面と自分の関係について絶えず情報を受け取る。一方、靴を履いた足は変わらぬ環境の中で眠るばかりだ。
けがの予防法のひとつとして、週三回、裸足で濡れた草の上を走ることなどを推奨。

これらの主張を裏付けるような、メキシコの山岳民族タラウマラ族の驚異的なタフさ。
彼らは、小さいころから靴を履く習慣がなく、裸足もしくは簡素なつくりのサンダルのようなもので、生活のために長距離を歩く日常を過ごしている。100km近く走ってもほとんど疲れを見せない。
「フルマラソン42.195kmでは短すぎて実力が発揮できない」って、冗談みたいな本当の話なのだそう。

大事なことを忘れないようにしたいのですが、生活環境がかなり違うということがあります。
タラウマラ族はもちろんアスファルトではなく、起伏に富んだトレイル(山道)を歩き、走る生活であり、生まれながらにして足で長距離を移動することが当たり前に暮らしています。
われわれ都市生活者が、走法を安易に真似しても怪我をしないとは言い切れません。

そして、世の中には医学的にも色々な考え方が存在し、「人間の身体がそもそも歩いたり走ったりするように設計されていない」とする意見があることも紹介されています。
足を酷使するなら、手術や矯正器具のお世話になるのが当たり前、とする説。
一方で、そのように足を保護することをやめ、裸足で走ることで痛みから解放された例がたくさん紹介されています。
アメリカでも多発するランニング障害(足底筋膜炎や腰痛)についても。

―後半につづく―

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