息の吸い過ぎという問題

今回は呼吸についての考察です。
じつは長年お客様の身体を見ていて、あることがずーっと気になっていました。
「この方は息を吸い過ぎていて、それによって筋肉や神経の緊張が激しくなっているのでは??」
と感じるケースがしばしばあったのです。
具体的な特徴としては、
・上半身の厚みが目立つ
・ぜんそく、気管支炎、のどや鼻のトラブルが多い
・話し始める時に、思い切り息を吸う(吸う音がはっきり聞こえる)
・リブフレア(肋骨弓の角度が開いて90°以上になっている)である
・そんなに食べていないのに痩せない
直観的には息を吸い過ぎているように見えるのですが、いっぽうで「吸った分だけかならず吐くわけだから、吸い過ぎという現象自体ありえないのかな…」と思う部分もあり、確信が持てずにいました。
2017年に発売された『トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法』(パトリック・マキューン著/かんき出版)という本を読み、この疑問がすんなりと解けました。よくある意識高い系のタイトルだなと思ってスルーしていましたが、良い本です。みんな読んで欲しい…


やっぱり息の吸い過ぎ(正確には呼吸量が多すぎること)はよくないし、呼吸量を減らすことでさまざまなメリットが得られるようです。本の要約をベースに詳しく説明していきます。

呼吸過多がなぜいけないか?

◆慢性的な呼吸過多とは
呼吸の仕方には主に2つの側面があり、
①健康的な人の1回あたりの呼吸する量(吐く&吸う)は約500ml。およそペットボトル1本分。
②健康的な人の1分間あたりの呼吸回数は、10~12回。
1回の呼吸量が正常でもペースが早過ぎれば呼吸過多だし、ペースが正常でも1回の呼吸で1,000ml吸っていたとすればこれも呼吸過多につながる。量と回数の両方が多すぎる場合もあるとのこと。
この話をすると、「吸い過ぎていて、吐けていないということですか?」と聞かれます。ちょっと違います。吸い過ぎかつ吐き過ぎだから「呼・吸・過・多」です。

◆呼吸で大切なのは酸素ではなく二酸化炭素
私たちが生きていくために酸素が必要。だから浅い呼吸じゃなく深呼吸をしてたくさん酸素を取り入れましょう、というのが一般的な呼吸に対するイメージではないでしょうか?
酸素が必要なのは確かですが、細胞に酸素を効率よく運搬するためには必ず二酸化炭素が必要です
しかし、日常的に呼吸過多の状態にあると、血中の二酸化炭素濃度が下がり、結果的に酸素が運搬されなくなるということです。
※その際たるものが過換気症候群で、息の吸い過ぎによっておこる苦しい発作として知られていますね。
体内の二酸化炭素には、大切な役割があります。
・血中の酸素が体内の細胞に放出されるのを助ける
・気道と血管の壁の平滑筋を拡張する
・血液のpH値を調節する

あなたは大丈夫?呼吸過多かどうかチェックしよう

本の中でBOLT(体内酸素レベルテスト)も紹介されています。息を止めていられる時間で、二酸化炭素への耐性を測るわけです。
1.鼻から普通に息を吸い、また鼻から普通に息を吐く
2.鼻をつまむ
3.そのままの状態で「息をしたい」という最初の欲求を感じるまでの時間を測る
20秒より短い人は鼻詰まりや睡眠障害、倦怠感などの症状があることが多く、訓練によってスコアが伸びていくと体調がよくなっていくのを実感できるそう。40秒を目指せると良い、と。
※これはあくまでもテスト法で、トレーニングではありません。

よりよい呼吸をするために

このようにして現在の呼吸パターンを知ることが大事。そのうえで、スポーツ習慣の有無などライフスタイルに合わせた「酸素アドバンテージ・プログラム」というものが紹介されているのでチャレンジしてみてください。ちょっと複雑で私は全部読むのに苦労しました。やってみたいけど面倒くさいなと感じてしまう人は、正直多いのではないかと思います。
すごく簡略化して伝えるなら、鼻呼吸を習慣化し、日常生活の中で息を止めて過ごす機会を意図的に作る。というプログラムです。

ちなみに私山田の例です↓
安静時の呼吸回数は9回/分。BOLTスコアは30秒。呼吸過多にはあてはまらないどころか、呼吸量も回数も少ないほうではないかと自覚しています。でも、舌位が下がりやすく、気が付くと口呼吸をしている瞬間がたまにあります。子供のころはよく口をポカンとさせていて注意されました。口呼吸をしていたのでしょう。
酸素アドバンテージ・プログラムに紹介されていた方法をジョギングの時に実践しています。それは、運動時も口呼吸しないで、あくまでも鼻呼吸だけで走るシンプルな方法です。やってみるとわかりますが、最初はめちゃくちゃしんどいです。すぐに口で呼吸したくなります。おのずとペースがゆっくりになります。ところが、1~2km以降からいつにない身体の軽さを実感できます。約5kmを走り終わった時、あまりの疲労感のなさに驚きました。脳がすっきりします!
ウォーキングの時にも、同じように基本は鼻呼吸で、たまに息を吸いたくなるまで呼吸を止める、ということをやっています。
セミナー等で何時間もしゃべり続けると、毎回ひどく疲れますし、よくしゃべった日は頻繁に頭痛が起こっていたことを思い出しました。これは息の吸い過ぎから起こっていた可能性が高いので、次からは、休憩中に息を止める呼吸法を実践してみようと思っています。

パーソナルトレーニングの中では最近よく下記の呼吸法を取り入れています。
<エア・ハンガー・ドリル>
軽く息を吸って、軽く吐いたところで息を止める

息を止めたままスクワットや背中の運動(または歩く)をして、大きな筋肉を動かす=血中の二酸化炭素を増やす

息を吸いたくなったら、静かに呼吸をはじめてもらう。※急いでガーッと吸わない。
神経学のトレーニングではおなじみの「エア・ハンガー」と呼ばれる呼吸法です。
これを3回ほど繰り返すだけで、関節の可動域が広がる、全身が軽くなるなどの変化が見られます。ふだん呼吸過多の人ほど変化が大きいように感じます。

※正しいやり方でやらないと、かえってネガティブな反応が起きることがあります。限界近くまで息を我慢すると危ないので、実践にあたっては書籍等を読んでよく理解してから行ってください。

本の冒頭のほうで、

たいていの人は、健康のために何をどれくらい食べ、水をどれくらい飲めばよいのか知っているだろう。~中略~
しかし、空気の「量」についてはどうだろう?
空気もまた、食べ物や飲み物と同じように、健康のための適正量というものが存在するのかもしれない。

トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法

と記述がありました。確かにそうで、呼吸の量や空気の吸い方を見直すべきかもしれません。呼吸量が健康な身体を作るカギになるのだとすれば、手軽に呼吸量を測定できる機械があったら良いな、と思います。Amazonとかで探しても見当たりません(いわゆる肺活量ではなくて平常時の呼吸量を測りたいです)。ご存じの方がいらしたら教えて欲しいです。
今回紹介した内容がすべての人にとって有効とは限りませんし、呼吸って場面によってかならず変わるものです。呼吸についてはまだまだ勉強したいと思っています。

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